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同一性?性同一性障害・・・・同一性,アイデンティティー,identity・・・・難しそうな言葉ですね。要するに,同一性って何なの? 同一性とは,「自分が自分である」という実感,「わたしはわたし」と気負いなく言える状態,そんな意味です。ふだんは意識しません。わたしの振る舞いがわたしにとって「自然」と思える時,「自由に」生きている時,同一性なんて意識しません。同一性を意識するのは邪魔物にぶつかった時,不自由を感じる時です。わたしにとって自然な振る舞いが周りから奇妙な目で見られる時,周りから要求される生き方がわたしには馴染めない時,同一性を意識させられます。 こんな時,どうすればいいのか?わたしにとって自然な生き方を貫くべきなのか,世間の常識に合わせる方が良いのか?・・・・こんなこともあります。世間の常識的な生き方はどこか馴染めない。かと言って,自分にとって「自然な」生き方ってどんな生き方なのか分からない。こんなふうに,「わたしはわたし」で済まされない状態,そのために困ってしまう状態,それを精神医学の言葉で同一性障害と呼びます。文学や哲学の世界なら「アイデンティティーの危機」とも言います。 たいていの人が人生で一度は二度は必ず経験することです。たとえば,親に言われるままに,名門中高一貫校→一流大学→一流企業というコースを歩んでいた子供が,幼い頃は特に疑問ももたずそのコースに乗っていたけど,中学・高校・大学と成長するにつれて「これでいいのかな?・・・・何かが違う?・・・・親が期待する『良い子』はわたしには馴染まない」と思う時,あるいは,そんな気持ちの一方で,これまでの良い子を止めるのが怖い,良い子を止めて,どんなふうに生きて行けば良いか分からない。そもそも自分は何を求めているんだろう・・・・。これも立派な同一性障害,アイデンティティーの危機です。 同一性が男女の性にかかわる時,男として生まれていながら,男らしい振る舞いに馴染めない,女として生まれていながら,女であることが自分の気持ちにしっくりいかない,こんな時が「性同一性障害」。そして,男であれ女であれ,「わたしはわたし」と自然にしなやかに生きて行けるようになった時,その人は性同一性障害を乗り越える。 どうやって?・・・・それは人さまざま。 性転換手術も方法の一つですが,唯一の方法ではないし,誰にとってもベストの方法でもありません。自分に一番ふさわしい方法は自分で探すしかない。ただ,周りの人間も多少は手助けできることもあるでしょう。精神科医をはじめとする医者も,「周りの人間」のうちの一人です。 「それにしても,どうしてわたしは『普通に』生きられないのだろう?」性同一性障害に直面した人なら誰でも一度はこうつぶやくでしょう。生まれながらハンディを背負わされている。しかも,身障者のように気配りされるどころか,軽蔑とからかいの対象にされるだけ・・・・。そうかもしれない。でも,わたしは敢えて言いたい「ハンディはチャンスと背中合わせ」と。 同一性障害には多くの人も直面する。ただ,性同一性障害はほかのどんな同一性障害よりも鋭く自分の生き方に迫ってくる。だからこそ,自分の生き方に敏感になる。自分にとって「自然な」生き方を探さないではいられない。でも,そのお陰で,誰よりも自分らしい生き方を見つけることができるかもしれない。 …こんな言葉は,友達と一緒に出掛けた温泉の男湯と女湯の前で立ちすくむあなたには空しく響くかもしれない。でも,いつかきっと,この言葉があなたの心に届く時が来る。わたしは信じています。 |
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