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第19回
統合失調症とは
統合失調症(Schizophrenia)とは妄想や幻覚などの多彩な症状をしめす精神疾患のひとつです。以前は精神分裂病と呼ばれていました。みなさんもその名前は聞いたことがあるとおもいます。では実際はどんな症状をしめすのでしょうか。
妄想とは現実的にはありえない不可解な思い込みのことです。現代ではアニメのキャラクターや好きな人を頭の中で想像していることを妄想と呼ぶこともあります。しかしこの病気の妄想はまったく違います。
現実はどんなことないのに「周りのみんなが自分の悪口を言っている(被害関係妄想)」と思い込んだり、「自分の部屋のなかに盗聴器が仕掛けられている(注察妄想)」と思い込んだりします。中には「巨大な悪の組織に自分は狙われている」と思い込んで常にその恐怖と戦っている人もいます。周囲の人が「そんなことないよ」と説明しても納得しません。妄想がエスカレートするとそれに基づいて異常な行動をとることがあります。自分の部屋にバリケードをはったり、警報機をとりつけたりします。 私も何人かの患者さんの自宅に訪問したことがありますが、すべての窓にダンボールをはって部屋の中を決して外から見られないようにしていました
。なかには「自分を狙っている」と思う人に対して襲い掛かったりすることもあります。この例として有名なのはライシャワー駐日大使刺傷事件です。これは1964年駐日大使だったライシャワー(1910-1990)が19歳の統合失調症の少年に太ももを刺されて負傷しました。当時大きく報道され精神衛生法という精神患者さんに関する法律にも影響を与えました。そのほかには「自分は特別な使命を与えられた人間である」「神の生まれ変わりだ(誇大妄想)」と主張したりする人もいます。新興宗教の教祖さんにもいるタイプかもしれませんね。
幻覚とは実際は外部からそのような入力がないのに「人のこえが聞こえる(幻聴)」とか「男の人がベッドのそばからじっと見てくる(幻視)」などと体験してしまうことをいいます。統合失調症の患者さんに多いのは幻聴です。いろいろなことを要求してきたり、「バカヤロー」など悪口をいってくることもあります。中にはその幻聴と会話をしている患者さんもいます。みなさんも電車の中で独り言をいっている(独語)ひとをみかけたことはないでしょうか。これは対話式幻聴といって幻聴と対話しているのです。患者さんもそれに振り回されて行動してしまうこともあります。この幻聴は耳を耳栓でふさいでも効果ありません。「頭の中に直接聞こえてくる」と患者さんが言うように脳に直接聞こえてくるものだからです。
この統合失調症の患者さんは日本では実に70万人もいるといいます。全人口の約1%、つまり100人に一人が罹患するといわれています。その歴史は古く古代ギリシャや中国の古文書にも症状が記載されています。
以前は「狂病」などと呼ばれていました。
統合失調症の症状が詳細に記載されるようになったのは1852年にフランスの精神科医モレル(1809-1873)という人が早発性痴呆(仏Demence precoce)と呼んだことから始まります。
比較的若いうちに痴呆のような症状になってしまうことから名づけられたのです。
診断基準は次のとおりです。
A.特徴的症状:以下のうち2つ(またはそれ以上)、おのおのは一ヶ月の期間ほとんどいつも存在:
- 妄想
- 幻覚
- 解体した会話(例:頻繁に脱線したり、滅裂な会話)
- ひどく解体したまたは緊張病性の行動
- 陰性症状(感情の平板化、思考の貧困)
B.社会的または職業的機能の低下:
障害の始まり以降の期間で仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している。
もう少しわかりやすく説明します。解体した会話というのは簡単に言えば意味不明なことを話すことです。突然会話の話題がかわったり、まったく関係ないことを話したりします。めちゃくちゃな言葉を話し続けることもあります(支離滅裂)。それもわざとではなく本人は普通と思って話しています。皆さんのまわりにも心あたる人はいるかもしれませんね。
「緊張病性の行動」とは何でしょう。これは奇妙な行動をくりかえりしたり(常同行為)、硬直したまま突然動かなくなったりします(昏迷状態)。突然興奮して騒ぎ出したりすることもあります。こうなると早急に治療が必要な状態です。精神科への緊急入院の対象です。
「陰性症状」とは最初の興奮状態などがおさまったあとにあらわれる症状です。表情がどんよりとして活気がなくなります。一日中眠っていることもあります。笑顔もみられなくなり、楽しんで活動することもできなくなります。活動のエネルギーが極端に低下した状態といってもいいでしょう。
統合失調症といってもその症状は多彩であり、いつくかに分類できます。次回はもう少し詳しくその症状について探っていきたいと思います。また病気の原因は何なのでしょうか。どういう人がなりやすいのでしょうか。次回ご紹介したいとおもいます。
堀江賢治
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