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第18回
治療効果の信頼性について
現在精神科領域でもさまざまな新しい薬が開発されています。前にうつ病の項で紹介したパロキセチン(商品名パキシル:セロトニン選択的取り込み阻害薬)もそのひとつです。新聞のなどで「従来の薬よりも副作用が少なく○○%の患者に有効であった」などの大きな広告が載ることもあります。病院でも患者さんに配布される資料のなかで薬の効果について説明がのっていることもあります。パキシルなどは精神科医だけではなく町の開業医でも広くつかわれるようになってきています。では私たちは宣伝されている情報をそのまま信用してよいのでしょうか?医師が「効果がある」といった薬を疑問も持たず服用してもよいのでしょうか?
実は薬の宣伝には非常に危険な罠が潜んでいます。たとえばこのパロキセチン、製薬会社のパンフレットによると「最終全般改善度における改善率(中等度改善以上)は、50.4%(454例中229例)であった」とあります。
パロキセチンを服用したうつ病の患者さんのうち実に半数がよくなったということです。この数字を私たちはどう考えたらよいのでしょうか?
皆さんはプラセボというのはご存知でしょうか。これは偽薬(にせの薬)とも言って何の薬の成分も含まないものです。これを「有効な薬ですよ」とうそをいって患者さんに服用してもらったとしましょう。すると実に35%の人に効果があるといわれています。不思議ですね。これは一種の暗示であり「効く薬だ」と信じる気持ちが症状を改善させるのです。
これをパロキセチンの有効率と比較してみましょう。パロキセチンの有効率は50%であったのに対し、プラセボは35%であり実に15%の違いしかないのです。これは薬の真の有効率は15%しかないということです。非常にわずかの差でしかないのです。
さらにパロキセチンの副作用(吐き気や頭痛など)の発現率は実に60%にもなると報告されています。これを皆さんはどのように思いますか?
このような事実があるのにもかかわらずパロキセチンはうつ病の第一選択薬として多くの医師が処方しています。医師はこの事実を知って処方しているのでしょうか。
私たち医師がどの薬を使うか選択するときよく使うのは製薬会社から配布されたパンフレットです。製薬会社の営業さんが定期的にそのパンフレットをもって医師の休憩室に挨拶にきます。彼らは実にうまく薬の有効性について説明します。またパンフレットにも詳しい薬の説明とともにその有効性についても記述があります。「○○名の患者にたいして使用したところ実に○○%の患者の症状が改善した」などの研究データが紹介されています。副作用についても説明されておりますが多くは「従来の薬に比べ副作用の発現率は低い」とその安全性について強調されています。その分野の専門の知識をもった医師でなければ「これは有効な薬だ」とそのまま情報を鵜呑みにして患者さんに処方するケースがたくさんあるのです。つまり医学を修得した医師でさえ薬の真の有効性について知らないことが多いのです。
ドイツの研究グループが製薬会社の配布する医師向けのパンフレットを調査した報告書があります。それによると実にたった6%しか信頼性のある根拠に基づいていなかったのです。多くは大げさにその効果を宣伝したり、また副作用についての説明が不足していたりしていました。多くの医師がその情報を信じて薬を処方することになるのです。
アメリカではFDA(米国食品医薬品局)という薬の認可を下す機関があります。何年かまえに行われた調査によるとFDAによって認可された薬のうち実に86%がその有効性をしめしたしっかりとした根拠がなかったのです。
薬の有効性についてはこのように非常に危険なわながひそんでいます。薬を服用する場合、医師にその有効性についてしっかり確認することが大切なのです。
堀江賢治
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