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薬の体内での動き 2薬の体内での動きの、2回目です。前回小腸から吸収された薬は、体内でどんな旅をしてゆくのでしょう? まずは前回のおさらいから。口から入った薬や食べ物は、胃を経て、小腸にたどり着くまでに、様々な消化酵素や胃液などで、吸収されやすい形になるまで分解されて、小腸から体内へと吸収されていきました。 さて、門脈と呼ばれる血管に入った薬は、血流に乗って、最初に肝臓にたどり着きます。 ここが、体に入った食べ物や薬の第1関門になります。 〈代謝って何?〉 肝臓は体にとってとても大切な臓器です。小腸から運ばれてきた栄養を蓄え、そして、有害な物質はどんどん分解して解毒してしまいます。 この、分解→解毒のプロセスを「代謝」といいます。 代謝は必要不可欠な働きですが、困ったことがあります。それは、せっかく飲んだ薬も、 「こいつは、いーらない!」 と、勝手に決めて、分解してしまうのです。 ちょっと待って! それ、せっかく飲んだのに!――なんて言っても、肝臓には通用しません。かくして、のんだ薬の何割かはそのまま効果を現すことなく、哀れ、排泄の憂き目に遭ってしまうのでした。これを、「第一次通過効果」と呼びます。内服薬の困ったところは、この第一次通過効果をうけてしまうこと。 粘膜から直接吸収する坐剤や注射薬は、肝臓を経ることなく、素早く確実な効果を現します。症状が重いときに注射や坐薬を使うのは、こういう理由があるのです。 〈代謝に負けない内服薬〉 もちろん、内服薬も、そんな肝臓の機能を把握した上で、きちんと効果があがるように考えて作られています。 その一つが、あらかじめ、代謝される割合を想定してその分上乗せした量で作ること。これが一番簡単で、基本的なやり方です。 また、「プロドラッグ」と呼ばれる方法があります。これは、代謝されたあとになってから初めて薬としての効くように設計されたものです。ですから、飲む前の薬そのものには目的の効果はありません。いわば、代謝を逆手に取った裏技といったところでしょうか。 〈代謝酵素の問題〉 代謝は、肝臓にある様々な酵素で引き起こされます。 一番身近な例が、お酒と二日酔。お酒=アルコールは、肝臓でアルコール分解酵素によってアセトアルデヒドという物質になります。そこから更に代謝が進み、アセトアルデヒド分解酵素で酢酸になり、排泄されてゆきます。ところが、このアセトアルデヒドの分解酵素、日本人では約半数の人が持っていないか、あるいは持っていても欧米人に比べて量が少ないのです。 アセトアルデヒドは非常に有害な物質で、二日酔の原因になったり、酷いときには急性アルコール中毒を起こしたりします。 さて、どんな薬も食べ物も、アルコールの例のように、分解する酵素が決まっていて、決まった酵素以外の酵素では分解されません。 ところが、酵素の方はそうではなくて、一つの酵素でいくつもの物質の分解を担当しているのです。一番ポピュラーなのがチトクロームP450という酵素です。この酵素は人気者で、常に引っ張りだこの状態です。 ここで起こってくるのが代謝酵素の問題です。一つの酵素に、いくつもの薬や食べ物が殺到したら、どうなるでしょう? 酵素一つにつき、一度に分解できるのは一つだけ。当然、酵素の量よりも多い量の食べ物や薬がやってきたら、代謝が追いつかなくなってしまいます。上で例に挙げた「急性アルコール中毒」も、無理な一気飲みなどで、酵素の量よりも遥かに多いアルコールが肝臓にやってきて、いつまでも代謝されずに体内に残ってしまうから起きてしまうのです。 問題になってるのが、この、「酵素の取り合い」です。この数年で、薬局から出される薬に、やたらと「この薬のむときは、あの薬のんじゃダメ」「アレと一緒に飲んじゃダメ」「コレ飲むときは、ソレ食べちゃダメ」と注意書きが書かれていませんか? たとえば、グレープフルーツジュースと血圧の薬や睡眠薬。 たとえば、セントジョーズワートと抗不安薬。 「いちいちうるさいなぁ」なんて、ついつい思ってしまいがちですが、これはとても大切なことなんです。 何故そんなことが言われるかというと、それらが同じ酵素で代謝されるからなんです。酵素を取り合うものを一緒に飲んだり食べたりすると、せっかく代謝を計算に入れていたのが台無しになってしまいます。量を上乗せしていた薬は効きすぎてしまい、プロドラッグは逆に「効く形」にならないので、効き目が落ちてしまいます。 数年前にこれで死亡例などが出て問題になったのが花粉症の薬トリルダン。花粉症の薬にありがちな副作用の眠気がほとんどなく、人気の薬だったのですが、いわゆる「飲み合わせ」の問題で発売中止になってしまいました。そして、飲み合わせによる危険を回避して再開発されたのがアレグラという薬です。 飲み合わせの問題は非常に重要ですので、特に薬と薬の飲み合わせには注意して、新しく病院にかかって薬が出るときには、今、他にどんな薬が出ているのかをドクターに必ずお話ししてください。
真宮里沙 投稿日:2007年8月2日 |
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