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HOME>>真宮薬剤師コラム>>感染症とその薬 9

感染症とその薬

-9-

 

〈ワクチンとは〉


  ウィルスによる感染症は他の感染症に比べ、対症療法に偏りがちな部分が多いことは以前お話ししましたね。そんなふうに、一旦感染してしまうと厄介なウイルス感染症ですが、ここで発送を逆転させてみましょう。

 「治療」するのが難しいなら、罹らないようにすればいいのです!

 そう、つまりウィルス感染症には「予防」がとても大事なことだったのです。そこで、ワクチンの登場です。

 「ワクチンって、名前は聞くけど、何だか難しそうでよくわからないわ。要するに、何のこと? 何をどうするの?」

 確かに、名前はよく聞くけれど、その実態が何なのか、一般の人々にはあまりよく知られてないようです。でも、言い方を変えれば皆さんもピンと来るのではないでしょうか。
  この季節、インフルエンザの予防接種を受けようかどうしようか迷ってる方も多いことと思います。インフルエンザに罹るのはイヤだけど、受けた予防接種と違う種類のインフルエンザが流行ったら、受けた分だけ損だし、考えると憂鬱になってしまいますね。
  その予防接種は英語でvaccination。そして、ワクチンはvaccine。つまり、予防接種の注射器の中に入っているアレが、ワクチンだったのです。

 ワクチンの条件として以下のことが上げられます。
1)充分な予防効果があること
2)副作用のない安全なものであること
3)保存性がよく、変質しないこと
4)接種方法が用意であること
5)価格、経費が安価であること

〈ワクチンの働き〉


  一度感染症にかかって、そこから回復すると、同じ病原体による次からの感染に対して抵抗力ができます。これを、「免疫ができた」といいます。
  具体的に説明しましょう。人の体の中には、外部からの侵入と闘うためのメカニズムがあります。それが免疫機構です。免疫は、「自分」と「自分以外のもの」を見分けるのが得意で、「自分以外のもの」が体内に入ってきたら、すぐさま応戦するのです。その時に侵入者に使う武器の一つが抗体です。抗体はとっても強力なのですが、大きな弱点があります。
  それは、一つの侵入者に対して効果のある抗体がきっちり決まってしまって、他の抗体では役に立たないということ。そして、初めてやってきた侵入者には抗体を作るのにとても手間取ってしまうということ。
 そこで、開発されたのがワクチンだったのです。健康なときに、毒素を抜いたり、弱くしたウィルスをほんの少しだけ体内に入れると、免疫はそのウィルスに対する抗体を体内に作って記憶します。すると、今度、本当にそのウィルスが侵入してきたときに、すぐに抗体を出してきてウィルスをやっつけることができるのです。
  ワクチンはウィルスだけでなく、細菌や寄生虫などが原因の感染症にも使うことができます。つまり、ワクチンの正体は、弱体化させた病原体そのものだったというわけです。
 

〈ワクチンの歴史〉


  ワクチンの起源は18世紀の終わり、ジェンナーの種痘からはじまります。ジェンナーと言えば、偉人伝などでよく知られていますね。当時のイギリスは天然痘がよく流行しました。天然痘は死亡率が非常に高く、治癒したあとも体中に目立つ瘢痕が残ることから、悪魔の病として知られてきました。日本では疱瘡、もがさと呼ばれ、疱瘡神という疫神が引き起こすと信じられ、恐れられてきました。
  ジェンナーは天然痘に対抗する手段の研究をしていましたが、なかなかうまくいきませんでした。そんなある日、田園地帯を歩いていた彼は、街の人々に比べて、田園地帯の人々には天然痘の痕がある人が少ないことに気づいたのです。そして、乳搾りの女性から「私たちは牛痘にかかってるから、天然痘には罹らないんですよ」と聞かされたのです。
  牛痘は天然痘に比べれば軽い病気です。ジェンナーは、牛痘に罹った人は天然痘に対する免疫を獲得しているのではないかと考えたのでした。この推測から生み出された種痘は天然痘の予防に大いに貢献しました。
  ちなみに、このときジェンナーが初めて種痘を実験するのに我が子を選んだ、というのが美談となって偉人伝のクライマックスとなっていましたが、実はそれは間違いで、実際に種痘をうたれたのは、ジェームス・フィップスと言う、ジェンナーの家の下働きの子供であったのが本当のところだそうです。

 それはともかくとして、ジェンナーの種痘が、その後パスツールによる弱毒性生ワクチンの開発につながり、ついには1979年をもって、地球上の疱瘡根絶に至ったことは、真実であり、偉大な業績であることに代わりはないのです。

〈ワクチンの種類〉


ワクチンには様々な種類がありますが、代表的なところでは不活化ワクチンと生ワクチンがあげられます。

・不活化ワクチン
  ウィルスなどの病原体を加熱したり、ホルマリンなどの化学薬品や紫外線照射などで殺して、感染力をうしなわせたものです。
  獲得できるのは体液性免疫のみなので、免疫の持続時間が短く、再接種が必要です。副反応と呼ばれる、ワクチンをうつことで起こる体調不良は、アナフィラキシーショック、じんましん、発熱、けいれんなどがあげられます。
  現行のものでは、インフルエンザウイルスワクチン、狂犬病ワクチン、三種混合(DPT)ワクチン(百日咳・ジフテリア・破傷風混合ワクチン)、二種混合(DT)ワクチン、日本脳炎ワクチン、B型肝炎ウイルスワクチンなどがあります。
  また、日本未承認で、個人輸入取り扱い医療機関に申し込む必要があるものに、不活化ポリオワクチン 、インフルエンザ桿菌b型ワクチン、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンなどがあります。

・生ワクチン
  弱毒化した病原体を生きたまま接種するもので、病原性の弱い変異株や人工的に毒力を減弱させたものを用います。不活化ワクチンでは十分な効果が見込めない場合に用います。
  体液性免疫と細胞性免疫の両方が獲得でき、免疫は長期にわたって持続します。副反応は、発熱、ワクチンの病原体による疾病の軽症発症などがあげられます。
  現行のものではBCG、経口生ポリオワクチン 、麻疹ワクチン、風疹ワクチン、麻疹・風疹混合ワクチン、流行性耳下腺炎(おたふく)ワクチン 、水痘ワクチンなどがあり、日本未承認のものでは、ロタウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチン 、新三種混合ワクチン(麻疹・風疹・おたふく。旧来日本でも行われていたMMR三種混合ワクチン) があります。

 

〈続く〉

真宮里沙

 

投稿日:2008年2月5日

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