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HOME>>真宮薬剤師コラム>>感染症とその薬 8

感染症とその薬

-8-

 

〈HIVについて〉


  STDの代名詞のように世間では言われているHIV感染症。正式名称は後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome:AIDS )といいます。何だかとても難しい名前ですね。原因となっているのはヒト免疫不全ウイルス――いわゆるHIVです。
  1981年にアメリカで同性愛の男性が発症したのが、人類のHIV感染症の歴史のはじまりでした。たった28年前のことです。HIV感染症は歴史が短いにもかかわらず、恐るべき早さで蔓延しました。
  感染者に同性愛者や麻薬常習者が多かったことから、当初は病気そのものよりも、感染者に対する差別の方が、ずっと深刻でした。
  何故なら、皆、「自分は普通の人間だからそんな病気にはかからない」とたかをくくっていたからです。しかしながら、現実はそうではありませんでした。母子垂直感染や、異性間の性行為、輸血などにより、「自分たちは普通だ」と思い込んでる人たちもHIVに感染するようになっていったからです。
  そして、人々はHIVに感染感染症の恐ろしさを知っていくようになるのでした。

 このウィルスは非常に変異しやすいのが特徴です。同じHIVであるのに、ウィルスの表面の抗原がとても多種多様にわたっているため、ワクチンを作って予防するのが困難なのです。そして、せっかくワクチンを作ることができても、また、HIVがのらりくらりと変異して、結局ワクチンが役に立たずに終わってしまうことになってしまうのです。

〈レトロウィルスの恐怖〉


  HIVはいわゆるレトロウィルスと呼ばれる種類のウィルスです。インフルエンザのウィルスなどは、DNAを持っていて、宿主の細胞を利用してDNAを複製していくのですが、レトロウィルスはそうではありません。
  レトロウィルスはDNAではなく、RNAをもっています。そして、ヒトなどの宿主に寄生すると、逆転写酵素という酵素を使って、自分の遺伝情報を持つDNAを作り出すのです。このDNAは、宿主の細胞のDNA配列に勝手に入り込んでしまい、相手のDNAを組み替えてしまいます。こうなってしまうと、宿主は、何処までが自分のDNAで、どれがウィルスのDNAなのか全くわからなくなってしまいます。
  そうやってヒトの体内で複製されてヒトのDNA配列に紛れ込んだHIVのDNAは、一旦感染したが最後、一生宿主の体内でコピーを繰り返し続けます。

 さて、HIVはヒトの体内の中でも、免疫機構で重要な役割を果たすヘルパーT細胞というものに取り憑きます。ヘルパーT細胞は、体内に異物が侵入してきたときに、B細胞にそれを伝えて免疫を発動させる役目を持っています。
  ところがHIVのDNAがヘルパーT細胞に取り憑いてしまっていると、この免疫機構がうまく働かなくなってしまうのです。免疫が働かなくなるとどうなるかというと、とても病気をしやすくなり、普通なら感染しないような弱い病原体にまで感染してしまうようになるのです。 

〈HIVの感染経路〉


  HIVは感染力はとても弱いウィルスで、普通に生活する分には、感染者と暮らしていても感染することは、ほとんどありません。感染源は感染者の体液であり、粘膜や傷にそれらが触れることがなければ、まず感染する心配はないのです。
  そして、医療事故以外で最も多い性交による感染も、感染率としては他のSTDに比べるとかなり低いものになります。
  しかし、だからといって油断は禁物です。感染力が弱い代わりに、HIV感染症は発症すると、ほぼ確実に死に至る、恐ろしい病なのですから。

〈感染したらどうなるか〉


  HIV感染症は、HIV初感染、慢性感染期、AIDS期に分けられます。
  初感染時の自覚症状は、約半数であると言われています。発熱、発疹、筋肉痛、リンパ節の腫れ、咽頭炎、嘔吐、頭痛、吐き気など、それだけで考えれば、普通に「風邪でも引いたかな」「何だかちょっと調子悪いな」ですんでしまい、そのまま感染に気づかないケースが主流です。 慢性感染期に移行すると、自覚症状はほとんどありません。この時期の感染者を無症候性キャリアと呼びます。
  しかし、体の中では確実にヘルパーT細胞がHIVのDNAに冒され、免疫機構が徐々に破壊されていっているのです。それに伴って、次第に症状も現れ、口腔や膣カンジダ症になったり、長期間発熱が続いたり、それまで神経節で眠っていたヘルペスが目を覚まして帯状疱疹をおこしたりします。

 発症後10年〜15年でAIDS期が訪れます。AIDS期に至ると、致死的免疫不全状態に陥ります。だんだんと疲れやすくなり、体重が激減し、下痢や発熱などに悩まされるようになってきます。この時期になると、免疫がボロボロになってしまい、健康な人なら何の害にもならないような微生物による重篤な日和見感染が起こり、それらが次々に合併していきます。
  ニューモシスチス肺炎やカポジ肉腫などの悪性腫瘍などへの罹患、そして、HIV感染細胞が中枢神経組織へ浸食し、エイズ脳症と呼ばれる精神障害や痴呆を引き起こすこともあります。
  AIDS状態に至れば、治療しないと2年前後で死に至ります。

〈予防と治療〉


  性的接触が重要な感染経路であるため、不特定多数の相手との性交渉を避け、必ずコンドームを用いることが重要な予防方法です。
  日和見感染に至るまでは、抗HIV療法が効果的です。しかし、日和見感染を併発し、重症化した場合は、抗HIV療法も効果が得られないことも多くあります。
  また、抗HIV療法を行うことで免疫が急速に開腹する反面、それによって感染症が悪化するといった事態が起こることもあります。

 いずれにせよ、一度感染してしまったHIVの治療は非常に困難であり、それゆえ、自衛が一層重要であると言えます。
  もしも、パートナーや、パートナーの昔のパートナーがHIV陽性であることがわかった場合、すぐに検査を受けてください。匿名での検査も受けられますので、リスクファクターはなるべく早く取り除きましょう

 

〈続く〉

真宮里沙

 

投稿日:2008年2月5日

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