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HOME>>真宮薬剤師コラム>>感染症とその薬 5

感染症とその薬

-5-

 

〈淋病について〉


  淋病は古くから性病の代名詞であり、聖書にもその記述が残されるほどでした。
  1984年をピークに、一旦減少の傾向を見せましたが、1990年代半ばから、再び増加しています。クラミジアと同じく、若年層に特に増加していることが問題視されています。男性では20代後半、女性では20代前半に最も多くの患者がみられます。

 原因菌は淋菌(Neisseria gonorrhoeae) です。
  淋菌はとても弱い細菌で、乾燥や日光にさらされるとあっけなく死滅してしまいます。体温付近以外では発育しにくいため、感染ルートは主に性交およびその類似行為であるとされていますが、稀に膿汁に汚染された指や衣類、器具などに接触することによって感染することもあります。
  そんな風に弱い淋菌なのですが、感染伝播力はそれに反して強いのが特徴です。1回の性行為での感染率は30%。HIVの感染率が0.67%であることを考えれば、恐るべき感染力であると言えます。また、厄介なことに、淋菌は一度感染しても免疫を獲得することはないため、再び淋菌と接触する機会があれば、再感染してしまいます。
  女性よりも男性の方が感染しやすく、その感染率は5倍もの開きがあるといわれています。

「STDの感染が増えてるって言うけど、具体的にはどれくらいなの?」

 調査によると、20代後半の男性では250人に1人が年に一度自覚症状のある感染をしているとのこと。
「増加傾向にある」と言われても今ひとつピンと来ないかも知れませんが、こうやって数字にしてみると―――――思ったよりも多いものなんだな、と実感できますね。

〈淋病の症状〉


淋病男性の症状男性の場合

  淋菌に感染することで尿道炎を起こし、排尿時の痛みや、外尿道口の発赤を起こします。尿道から膿性の分泌物を出すことが特徴で、そのため古代では陰茎の勃起を伴わずに精液が漏れ出す病気と考えられていました。淋病の学名gonorrhoeaeは、「gono=精液」と「rhei=流れる」からつけられた名前です。
  潜伏期間は2〜7日間と短く、自覚症状もクラミジアなどに比べてはっきりしているため、STD全体の蔓延率の指標ともなっています。
  尿道にのみ炎症が起きている場合は痛みのみで発熱はありませんが、菌が奥に入り込んでくると精巣上体炎を引き起こし、発熱・悪寒・戦慄などの全身症状もでてきます。

淋病女性の症状女性の場合

  子宮頚管炎を起こします。主症状はオリモノで、黄緑色の膿のようなオリモノが出たり、悪臭が出たりします。また、男性の場合と同じように排尿痛や尿道不快感、膿が出たりといったことも。
  ただ、女性の場合はこういった自覚症状が出にくいため、気づかずに放置して悪化してしまったり、無自覚にパートナーに感染させてしまったりと、色々な問題が出てきます。
  悪化すると、子宮内膜炎や骨盤内感染(卵管炎、卵巣炎、骨盤腹膜炎)を起こして不妊症の原因になったり、腹膜炎や肝周囲炎に発展することも。淋菌感染症全体で見ると、10〜20%に骨盤腹膜炎が発生すると考えられています。

クラミジア共通の症状共通の症状

  男女で共通して起きるのが、口腔性交による喉頭炎、結膜炎、肛門性交による肛門直腸炎です。特に口腔性交による喉頭炎は多く、性器において淋菌の感染が見られる男女の30%は咽頭から淋菌が検出されているそうです。そして、性器感染に比べて治療に時間がかかると言われています。

クラミジア共通の症状垂直感染

  女性は不顕性感染が多いため気づかないまま妊娠して(あるいは、妊娠後、気づかないうちに感染して)分娩の際、産道で新生児に垂直感染を起こす場合もあります。新生児の垂直感染では、結膜炎、敗血症、関節炎、髄膜炎、鼻炎、膣炎、尿道炎などが起きます。
  大人では性器などの、部分的な感染になりますが、新生児の場合、全身が淋菌にさらされるわけですので、より重い症状になっていまいます。ただでさえ赤ちゃんはかよわいもの。そんな危険にさらされることがないよう、大人がきちんと自己管理・早期発見・早期治療を心がけたいものですね。

〈淋病の薬と治療法〉


  淋病はペニシリンの発見によって、それまでに比べて劇的に治療しやすくなりました。しかし、ペニシリンを分解する酵素を持つ淋菌が出てきたため、別の薬が用いられるようになってきました。
  また、日本においては、ニューキノロン系の薬を乱用して耐性菌が増えてしまったため、同じくニューキノロン系は使われなくなっていますが、海外ではまだニューキノロン系が優性だと言われています。

 現在淋病で保険が使える薬はセフェム系のセフトリアキソン(製品名:ロセフィン)、セフォジジム(製品名:ケニセフ、ノイセフ)、アミノグリコシド系のスペクチノマイシン(製品名:トロビシン)の3種になっています。
  トロビシン、ケニセフは1度の注射で治療できるため、よく使われています。その他、保険は適用されませんが、ピヘラシリン(製品名:ペントシリン)、メロペネム(製品名:メロペン)なども使われます。
  女性の場合は一般的に男性に比べて治療が難しく、投薬量も男性の倍量が必要だと言われています。

〈同時感染について〉


  前回お話ししたクラミジアと淋病は、実は両方同時にかかる人が多いのが特徴です。クラミジアの症状が出にくいので、淋病の検査にかかったときに両方見つかるというケースがよくみられます。
  どれくらい多いかと言えば、淋病感染者の2〜3割がクラミジアに同時感染しているのです!

 このように、一つのSTDにかかっていると、別のSTDに感染する率が高くなります。たとえば、淋病に感染している場合、HIVの感染率が通常の3〜4倍に跳ね上がります。
  STDに感染すると、性器の粘膜が荒れ、他の細菌に感染しやすい状態になってしまいます。ですから、「注射したからもう大丈夫!」と、楽観するのは危険。原因菌は薬でいなくなっても、荒れてしまった粘膜は、新しくやってきた細菌に対して、弱くなっています。
  かかった病気を治療するだけではなく、もう感染しないように予防することはとても大事なことなのです。

 

〈続く〉

真宮里沙

 

投稿日:2008年2月5日

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